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非公認Fanブログ。今さらデスノ語り。二次創作小説もちょっぴり。(カテゴリの小説&小ネタ一覧からどうぞ)
2025.05.17 Sat 01:53:33
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ご注意
* 二次創作小説です。
* なので、当然のように(?)捏造妄想全開です。
* マットVS月…………なの、か?……という感じです……。
以上のことをご了解いただけた場合のみ、「続きを読む」からどうぞ。
『W』
「あんたがニセL?」
突然近くから響いた声に、夜神月は誰何の声をあげようとして激しく咳き込んだ。
視界は白一色。
──というわけでもなく、灰色や赤茶けた色が混じり合い、白煙にコントラストをつけている。
日本捜査本部がひそかに拠点を置いていたビルで火災が発生したのだ。
ボヤと言えないこともない程度のものではあったが、煙の発生が激しく、瞬く間に建築物内に充満したため、とりあえずは屋外に避難しようと廊下を進んでいたところだった。
幸か不幸か、たまたま本部には月と松田の二人しかおらず、同時に部屋を出たものの、どこではぐれたのか松田がついて来ていないことに気づき、月は足を止めた。
そのときだった。
その、くぐもった、聞きなれない声がしたのは。
「へーえ。なかなかのイケメンだね。」
口元をハンカチで覆った──それ以上に、白煙で通路の設置物も輪郭程度しかわからないこの視界の中で、月の顔をどうやって判別しているのか。
──ただのはったりかも知れないが。
「なんだかんだ言っても、キラに対してはともかく、他のことではこれまでどうにかこうにかLのふりをすることができたわけだし。そこそこ有能でもあるわけだ。」
真剣なような、ちゃかしているような、なんとも判断のつかない口調。
「でも──」
それがふいに一転する。
「ダメだよ。あんたじゃどうやったってLにはなれない。」
冷たい怒り──
そんなイメージがふいに月の中に湧いた。
「俺が認めないからね。」
またふっとちからの抜けた──ふりをしたような、声。
「俺が認めた奴しか、『L』を継ぐことはできない。
そして俺は、あの二人しか『L』と認めるつもりはない。」
──あの二人。
メロとニアのことか。
とっさにそう言おうとして再び咳き込む。
喉がかなり痛んだ。気づかなかったが、さっき声を上げようとしたときに、相当煙を吸い込んだらしい。
ぜいぜいしながらも、言わせるばかりではおかぬと、目星をつけた方向をにらみつけた。
果たしてその視線に気づいているのかどうか。
「俺が誰かって?」
飄々とした声と気配がゆっくりと遠ざかっていく。
「Lの後継者は、キルシュ・ワイミーが用意した。
それを考えれば、すぐにわかりそうなもんじゃないか?」
白煙とサイレンの向こうで、相手が嗤うのがはっきりと感じられた。
「俺は、初代Lが、次のL達のために用意した──」
「ワタリ、だよ。」
「いたーっ! 月くーん!!」
どうにかビルの外へと出ると、野次馬や消防士たちをかきわけ、松田が大慌てで近づいてきた。
「松田さん……。」
「うわっ、ひどい声。煙吸っちゃったの?!」
僕は目をやられてね、煙の中、痛くてよく開けられなくて。なんとか壁をつたって外に出たら、月くんがいないんだもん、びっくりしたよ──
安心したのと、非日常的な騒動に興奮したのとでまくしたてる松田の弁を適当に受け流しながら、月は別のことに思考をめぐらせていた。
(ワタリ………ワタリだと?)
ワタリ。
キルシュ・ワイミーの別名。
Lの窓口役でもあり、多方面で非常に優秀な片腕だった人物。
たしかに存在すればやっかいな存在ではあり、始末するのにいささか骨が折れるだろうとは考えていた。だからレムがLだけでなくワタリの名までもデスノートに書き込んだと知ったとき、めんどうな予定を勝手にかたづけてくれたのかとひそかに嗤ったものだが。
Lだけでなく、ワタリにも後継者がいたとは。
あのくぐもった声は、おそらく防塵マスクか何かをしていたのだろう。
メロとニアをよく知っていそうなあたり、二人のワイミーズハウスでの院仲間という確率も高い。
もしそうなら、ワイミーズの英才教育を受けた天才児の一人ということになる。
ニア、メロが総合1位2位だったというのだからそれ以下ということにはなるのだろうが、たとえあの二人の半分程度の能力だとしても、キラの足を掬うくらいの危険性はあるかも知れない。警戒しておくのにこしたことはなかった。
(だが──)
焦げ臭い周囲の空気を避けるために当てているハンカチの陰で、ゆっくりと月の唇の端がつりあがる。
(ワタリなど、所詮『L』ですらない。
Lにとっての有用な持ちゴマのひとつというだけ……。
ただでさえ少なくなったメロやニアのコマがひとつふえたところで、どうということはない………が。)
あの「ワタリを名乗る人物」は、月を愚弄したのだ。
現在の『L』、世界最高の探偵である月をニセモノと言い放った。
決して本当のLには成れぬとも。
──許しておくわけにはいかなかった。
ごった返す火事場の騒乱の中、人知れず月が浮かべた冷たい笑み。
それはまさしく、末期のLに見せたキラの嘲笑に他ならなかった。
「──どこへ行っていた、マット?」
見張り場所へ戻ると、見計らったかのようにメロからの連絡が入った。
第一声から察するに、留守中に何度か電話してきたのだろう。
「日本捜査本部が潜伏しているビルでボヤが出たんだよ。偵察がてら野次馬して来ました。」
「……おまえが火をつけたんじゃないだろうな。」
「まさかぁ。」
火事はまちがいなく偶然だった。
……自分がしたことといったら、煙がやたら出るようになる小細工くらいだ。
「うまくしたら捜査本部が何階のどの部屋なのか確認できるかと思ったんだけど。」
本当にその程度のつもりで行ったのだ。
だが、偶然、夜神月を見つけた。
メロがSPKのスパイから入手していた、先代Lの使っていた日本警察とその家族の資料。そこにあった写真よりやや大人びてはいたが、まぎれもなく同じ顔。
(こいつが『L』を騙っている奴か。)
そう思った途端、腹の底で何かがぐわりと動いた。
そんなものが自分の中に存在することに自分自身も驚いたが、その不快な感触は、まぎれもなく怒りだったと思う。
そしてそれは、メロから聞いていた「初代Lを殺した者」へのものではなく、二代目Lたちが当然受け継ぐべきはずのものを簒奪している者への怒りだった。
二代目ワタリである自分の──二代目Lたちの。
マットには、ニアのようなLへの羨望まじりの憧れも、メロのようないずれ自分が越えるべき存在としての敵愾心も持ち合わせがない。
彼が存在したことでワイミーズハウスが現在のような体制になり、孤児の自分がかなり高度な教育を受けられたことには感謝しているが、それだけのことだ。
『L』の後継は指名しなかったくせに、自分をひそかに二代目ワタリに指名したのはLではあるが、指名されようがされまいが、自分は同じ立場に立ち、同じことをしていたと思う。
そしてそれこそが『ワタリ』の条件だと、モニター越しに彼は言っていた。
──推理力? 『ワタリ』にそんなものは必要ではありません。
それどころか、ニアやメロより推理力で勝っていたのなら、あなたが『L』です。
そんなことではなく。
あなたは私を──『L』を、なんとも思ってやしないでしょう。
もしあの二人が『L』や世界と敵対することになったとしても、あなたは何の迷いもなくあの二人につくでしょう。相手がどれほど強大で恐ろしい敵だとしても。
それこそが『ワタリ』の必須条件。
──あの二人がどちらも『L』にならなかったら?
そんな、自分でも塵ほどにも思っていないことなんて訊かないでください。
──あの二人がそれぞれに『L』を名乗って対立したら?
目も耳も手も足も、あなたにはふたつずつありますね、マット。ひとつしかないものは……
そうだ。
ひとつしかない心臓は、きれいに裂いて二人にひとつずつくれてやる。
だがそれは最後の手段。
そうさせないことこそ俺が俺に課した誓い。
たとえ一時的にそうなることがあったとしても最後には……。
──私は『なぜ』あなたがそうまであの二人のことを思っているのかは知りません。
しかし、実際そうであることは知っている。それで充分です。
ああ、あんたも誰も理由なんて知る必要はない。
俺だけが、俺自身だけが知ってさえいれば。
「やぶ蛇になるようなことだけはするなよ。」
用件を伝え、最後にそれだけつけくわえてメロは通信を切った。
メロ。
そしてニアも、『ワタリ』を知らない。
無論、ワイミー氏がワタリと名乗ってLの補佐をしていたことは知っている。
だが、それだけだ。
俺が先代から二人の『ワタリ』に指名されたことも、『ワタリ』が少しばかり有能なただの補佐ではないことも知らない。
そしてキラも。
──みんな、ワタリがワイミーであったことを忘れている。
『L』を生み出した存在であることを。
モニターから聞こえる合成音はそう言った。
──たしかに私の──Lの能力は天性のものだが、それを磨き上げるチャンスと手段を与えたのは、まぎれもなくワイミー。そしてLの推理と捜査の機動力を支え、『世界』と『L』とのつなぎ役となった。
Lとワタリとは、互いにお互いの影であり光でもある。
そして万一『L』が斃れても、『ワタリ』がいさえすれば『L』は必ずよみがえるでしょう。
ワタリの残したワイミーズハウスが、近い将来新たな『L』を送り出すのは間違いないように。
気持ち上はともかく、マットには自分でもワイミー=ワタリ並みの働きが出来るとは思えなかった。
それにもモニター越しのLはなんなく答える。
──あなたに初代ワタリと同じであれなんて言っていません。
新しい『L』たちも、私と同じであるはずがない。私にない欠点を持っているかも知れないが、ならば私にはない長所を持っているでしょう。私にできることができないかも知れないが、それなら私にできないことができるでしょう。
それは新しいワタリ、あなたも同じことです。
そうそうこの名は、早くに亡くなった、ワイミー氏の奥さんの旧姓だったそうですよ。日本人だったそうで。
伝えるとか、交渉するとか、ふたつの岸に橋をかけるという意味があるそうなので、『世界』と『L』とのつなぎ役にもちょうどいいということでそう名乗ったそうです。
二代目ワタリ。あなたの場合は、二人の『L』の橋渡しが、最大の仕事ということになりそうですがね。
「……わかってるよ、初代L。」
中空に漂う紫煙をながめながらマットがつぶやく。
そしていくぶん騒ぎが治まり始めた窓の外にちらりと視線を投げて、続けた。
「……それがわからないから、俺のようなものがいないから、なおさらあんたはLにはなれないんだよ。
──キラ。」
(了)
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