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績(せき)
性別:
女性
自己紹介:
ニア好き・ワイミ好き。
ニアが女の子だったらよかったのにと思ったり思わなかったり。
カプ的にはメロニア派だが、それでSSを書く可能性は大変低いと思われる。










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非公認Fanブログ。今さらデスノ語り。二次創作小説もちょっぴり。(カテゴリの小説&小ネタ一覧からどうぞ)
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注意
* 二次創作小説です。
* ニア死にネタです。
* 「L change the WorLd」ノベライズと、特別篇のネタばれがあります。
 
 以上のことをご了解いただけた場合のみ、「続きを読む」からどうぞ。
 
 
※ 2009/09/13 改訂
 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「最後の問いとその答え」
 
 
 
 
 
 
 最初に目に入ったのは、カーテンの隙間からわずかにのぞく、重い灰色の空だった。
 眠りに就く直前、あの子たちが出て行ったときにはぴたりと隙間なく閉じられていたはずだったが、あの後誰かが戻ってでも来たのだろうか。
 そんなことをしそうなのは───と働き始めた思考にブレーキをかけ、治める。
 思ったほどの労力が必要でなかったことに自嘲しつつ、そもそも二度と目覚める予定はなかったのにと、ニアは誰にともなくかすかに腹を立てた。
 そしてその苛立ちを乗せた視線を、カーテンの隙間の細長い曇天に向ける。
 すべての責任がそこにあるとでも言いたげに。
 
 (そう言えば───)
 あの日もこんな空の色だったと思い出す。
 
 あの日───
 Lの死を告げられ、メロがこの院から出て行った『あの日』。
 
 思えば、ロジャーにそれを告げられたのもこの部屋だった。
 ここ十数年はずっとこの部屋に住まっていたというのに、今さらのように思い出し、あらためて驚いていること自体に自分でも少々驚く。
 (───ああ、そうか)
 忘れていたからだ。ずっと。
 
 
 ひそかに『L』を継ぎ、世界中の、興味を惹かれた事件の調査に明け暮れる日々。
 それ自体は自分で望み選んだ道であるので、まったくもって否やはない。
 だが、好物料理も続けば飽きるのと同じで、たまに気分転換したくなることもある。
 だからと言って特にしたいことも行きたい場所もなかったので、そんな時はワイミーズハウスに戻っていた。
 戻ったところで、やはり特にすることもなく。
 そこでハウスにいたころに始終繰り返していたホワイトパズル───褪せてクリーム色がかってしまっていたが───を引っ張り出し、あの頃と同じように日がな1日それを組むのが常だった。
 
 
 それが崩れたのはいつだったろう。
 ある日、ニアが視線を感じて振り向くと、開け放してあったドアの陰から、7、8歳くらいの女の子がこちらをうかがっていた。
 「…………。」
 「…………。」
 無表情な視線がふたつ、しばし互いを検分するように相手に据えられていたが、じきに興味を失ったように黒い視線がそらされ、ぱちりぱちりとパズルのピースを嵌め込む音がふたたび響き始める。
 「…………。」
 残されたハシバミ色の視線はしばらくその白い背中を見つめていたが、やがておずおずとそのそばに近づき、背をあわせる形でニアの後ろにすとんと座り込んだ。
 そして持っていたおさげの人形を抱えなおし、無言のまま遊び始める。
 「…………。」
 ピースを1枚つまんだ指が、一瞬動きを止めた。
 「…………。」
 指の中のピースがくるりと回され、すぐに作業は再開される。
 「…………。」
 「…………。」
 ぱちりぱちりという音だけが繰り返される、その奇妙ながらも静かな空間は、2時間後、寮母がニアに夕食を運んで来るまで破られることはなかった。
 
 
 
 ニアの訪問が院の子供たちに知らされることはなかった。『L』としても、単なる卒業生としても。
 滞在中使用するのは子供たちのいるエリアからは最も離れた一室で、そもそもその部屋を含む棟自体、子供たちが立ち入ることは禁じられていた。
 そんな場所に、さして活発そうでもないその女の子がなぜやって来たのか───あるいは迷い込んだのか───ニアは知らなかったし、どうでもよかった。
 そもそもこのワイミーズハウス自体、人並み外れた知能や行動力や胆力や───好奇心旺盛な子供達を選りすぐり、さらにその特性に磨きをかけようという場所である。
 「根っこが生えている」とからかわれていたニアでさえ、一度ならず施設中を探検したことはある。
 もっともその姿を目撃したリンダに言わせると、「探検?! あれ探検してたの?! ……お年寄りの散歩にしか見えなかったんだけど。」ということだが、あまりにのんびり、かつ堂々とした歩きっぷりに、誰も咎める気になれなかったことはたしかだ。たとえその小さな白い姿が、立ち入り禁止の場所を悠々と横切っていても。
 おそらくその女の子も『探検』でもしていてたまたま見知らぬ部屋と人物を見つけ、休憩がてら座り込んだだけのことだろうとニアは思った。
 それはおそらく正しかったのだろうが、予想外だったのはニアがハウスを訪れる度、その子がニアのもとにやってくるようになったことだ。
 さらには、いつの間にか別の子供まで。
 
 
 彼らは連れ立ってやってくることもあるが、たいていはそれぞれのペースで勝手に訪れ、勝手に退室していった。
 最初のときのように一言も口をきかず、ただお互いの存在を感じながらそれぞれの遊びに没頭していたこともあった。
 議論というには平静すぎる口調とのんびりすぎるペースで、さまざまなことを延々と話し込んだこともあった。
 たまに思い出したように、ニアの方からぽつりぽつりと言葉をつむぐこともあった。
 寮母や院長たちに訊くと、子供達はニアがいない間は、もともと───そして今でも───立ち入りを禁止されているその棟には、ほとんどもぐりこまないらしい。
 ニアの訪問も以前と同様決して知らされることはないが、それでもおそらくは寮母の態度のささいな違いや何かから、待ち人の訪れを敏感に察知するのだ。
 
 
 ───この、すっかり変色したパズルを繰り返すばかりで、いっしょに遊んでくれもしない偏屈な人間の、いったいどこが気に入ったのか。
 ニア自身疑問に思わないでもなかったが、とりたてて邪魔でもなかったので放っておいた。
 無論、ハウスの子供のすべてがニアのもとへ訪れるわけでもなく、やがて院を卒業して来られなくなる子供もいた。
 まだ在籍はしていても、いつの間にかやって来なくなる子供もいた。
 しかし一人の姿が無くなるとまた新しい子供が現れ、常に片手で数えられる程度のメンバーの誰かしらの姿が、ニアの滞在中そのそばに見られるようになった。
 数十年後、ニアが次代のL『達』にその座を譲り、ワイミーズハウスの名のみの理事長となり、わずかばかりの改装をさせた院の奥の部屋を終の住み処としてからも、それは変わらず続いた。
 
 
 最近最もよく来ていた子は、最初の闖入者となった女の子に似ていた。
 容姿はまったく違うが、無口なところやニアのそばで黙々と一人遊びを繰り返すようなところが。
 つい先ほど、彼女ははるか年上の彼女の先輩───ハウスの卒業生でもあり、現『L』の一人でもある人物に連れられてここへ来ていた。
 口をかたく引き結んだ、いつもと変わらぬ無愛想気味の無表情。
 だがその瞳がわずかに潤んでいたことや、つながれていない方の小さな手がきつくスカートの布地を握りしめていたことに気づかないほど、ニアの観察力は衰えていたわけではなかった。
 ベッドから静かに片手をのばす。
 ゆっくり3度、その栗色の細い髪に包まれた小さな頭をなでつけた。
 手をきちんと元の場所に戻すと、細く長く息を吐き出し、ゆっくりと視線をめぐらす。
 ベッドを取り囲む数人。
 さまざまな年代、人種だが、はっきりした共通点がひとつ。
 彼らは全員がこの部屋で、秘密の休暇中のニアのそばですごした子供達だった。
 「………名残りは尽きませんが。」
 その場にいた全員に向け、いつもと変わらぬ口調で、年老いて小さくなった姿は告げた。
 「そろそろ時間です………一人にしてもらえますか。」
 「………。」
 女の子の手をつないでいた人物が小さくうなずき、人々を促した。
 一人ずつ目礼や会釈を交わしながら、部屋から出て行く。
 最後の一組となった女の子は、首を後ろにめぐらしながら、大きな瞳にベッドの上の白い姿を映し続けた。
 その視線も扉によってさえぎられ、かすかに聞こえていた足音も遠ざかって、消える。
 そうなってからようやく、ニアはぽつりとつぶやいた。
 「ありがとう。………それから、」
 ゆっくりとまぶたが落とされる。
 「どうか…………倖せに。」
 
 
 
 そのまま、二度と目覚めないはずだったのに。
 だんだん怒りが増してきて、起き上がろうとさえしてみた。
 しかしここしばらくの状態と何も変わらず、わずかに腕を動かすだけでもきしむような痛みが走る。
 この分ではじきに今度こそ永眠できるだろうが、どうにもすっきりしない。
 寝つけないときと同様、途中で目覚めてしまうときには何か気がかりがあるからだとよく言われるが、自分は何か気になることでもあるのだろうか。
 
 いい人生だった、と言える。
 もちろん傍から見ればそう思えないかも知れないが、ニア自身は自分の人生に満足していた。
 自分がなりたいものになり、自分で納得いくだけの成果を出し、そしてあの『闖入者』である子供たちによって、若い頃には想像もしていなかった余禄も与えられた。
 その子供たちも、すべてニアよりよほどしっかりした大人に成長した。まだ幼い者にも信頼できる後見人がついている。不安なことなど何もない。
 もちろん長い間には、失敗も後悔も山ほどある。
 しかし起きてしまったことは仕方がないと見切りをつけ、それを次の事例の教訓とした。
 『L』───世界の警察の最後の切り札は、立ち止まってなどいられないのだから。
 
 ───L
 
 ああそうか、と、ふいに忘れ物に気づく。
 あまりにも身近すぎ、あまりにも大きすぎ、だが、子供たちの訪問のおかげでいつしか忘れ去っていたひとつの疑問。
 休暇をこのワイミーズハウスですごすようになったころ。
 完成させたパズルを壊してはまた組み直すように、ニアの中で繰り返されていたひとつの問いがあった。
 
 ───自分は、Lに選ばれたわけではない。
 
 Lに会った───というより、話を聞いたのは一度きり。
 それでもその話の聞き方から、「自分の後を継ぐ者がいるとすればメロかニアだ。」と言ったのだと、後でロジャーから聞きはした。
 それでも、自分でよかったのだろうか。
 たまたま生き残った自分が『L』を継ぐことになったが、本当は「メロの方が後継にふさわしい。」と思っていたのではないか。
 
 ……いやいや、そんなことではない。
 自分が最も恐れていること、それは───
 自分の成してきたことは、本当に『L』にふさわしいものだっただろうか。
 
 初代が生きていると思われるように、彼のやり方を忠実になぞった3年間。
 様々な意味でこのままではいられないと、自分なりの『L』を作り上げた、その後の数十年。
 最期の最後。
 一人きりになったとき、長いこと忘れ去られていたその問いが、置き去りにするなとニアを引き戻したのだ。
 決して答えを得られないことがわかっていても。
 それでも、問わずにはいられなかった問いが。
 「L………。」
 閉じたまぶたとは逆に渇いた唇が開き、水を求めるようにわなないて言葉をつむぐ。
 「私は───あなたの期待に応えられていたでしょうか……?」
 
 
 「いいえ。」
 
 
 ふいに間近で響いた聞き慣れぬ声にのろのろと目を開くと、ベッド脇に一人の青年が佇み、こちらをのぞきこんでいた。
 ぼさぼさの黒髪、それ以上に黒さの際立つ、ぎょろりと大きな瞳。
 白い長袖のTシャツも青いジーンズも、くたびれているわけではないが真新しいわけでもなく。
 どこか奇矯さを感じさせる見知らぬ顔、見知らぬ風体。
 だが、すぐにわかった。
 「L────ですね?」
 「はい。」
 Lであるはずがない。最初のLであるはずが。
 彼は何十年も前に死んだのだから。キラに殺されて。
 たいていの人間の理性ならそう判断を下すだろう事象に、しかし世界最高の名を継いだニアの理性はまったく別の判断を下した。
 
 目の前の彼は、まぎれもなく<あの>Lである、と。
 
 しかし、ニアにとってそんなわかりきったことはどうでもいいのだ。
 そんなことより……。
 小さく息を吸い込む。唾も飲み込みたかったが、口の中さえ乾きかけていた。
 「今……なんと?」
 「Lかと問われたので『はい』と。」
 死にかけている老人の切羽詰った問いに対して、飄々と青年は返した。明日の天気か、夕餉のメニューでも聞かれたときのように。
 「………それでは、なく。」
 「その前の『期待に応えられていたか』という問いにでしたら、『いいえ』と答えましたが。」
 ニアはゆっくりと、知らず溜めていた息を細く長く吐き出す。
 どこか、小さな悲鳴にも似た音がした。
 「そう……ですか………。」
 ゆっくり、きつく目を閉じる。
 ───では、やはり、私のやり方では駄目だったのだ。
 『L』にふさわしいだけの結果は残したと自分では自負していたつもりだが、所詮自己満足にすぎなかったのだ。
 そもそも『L』になるべき器ですらなかったのかも知れない。
 (だが───)
 だが、そうだ。あの子たちならきっと───
 私が落とした『L』の価値を、あの子たちならきっと……。
 そこまで考えて、ああ、やはりと口元がそれまでとは違う形を作る。
 ゆがみにも見えるそれは、まぎれもなくニア独特の笑みだった。
 
 ───自分はまちがいなく幸せだったのだ。
 こんなにも後顧の憂いなく、期待すら残して去ることが出来るなんて。
 
 ふいに湧き上がった喜びと充足感。
 だがそれが大きいほど、Lに対しての申し訳なさも深まった。
 あの子たちが自分にくれたこの喜びの万分の一すら、敬愛するLに贈ることはできなかったなんて。
 
 
 
 「お見事です。」
 
 
 新たに聞こえた言葉に、再び目を開ける。
 自分をLだと言った青年は、先ほどと同じ、内面を何も窺わせない無表情でニアを見つめていた。
 そのまま、新たな言葉を告げ始める。
 ───ニアにとっては信じがたい言葉を。
 「私はあなたたちに───あなたに、何も期待してはいませんでした。
 あなたはまだ幼かったし、何よりあの時手がけていたキラ事件は私自身が請け負ったもの。私が勝つか、キラが勝つかで終わるだけのものと考えていました。
 あなたが『L』を継ぐかも知れないとは言いましたがそれも予想であって、『L』を継いで欲しいとか私のかわりにキラ事件を終わらせて欲しいとか、願ったわけではありません。
 ですから、『期待に応えられたか』と問われれば『いいえ』と答えるしかありません。もともと、何の期待もまったくしていなかったのですから。
 ───ですが、『私は『L』に値しましたか』『それだけのことを成しえたでしょうか』と問われれば、私はこうお答えします。
 ………『充分に』。」
 青年はかがめていた身を起こしたが、さして姿勢は変わらない。どうやらひどい猫背のようだ。
 そのままベッドから離れて部屋の中をゆっくりと歩きだしながら、淡々と話し続ける。ただの事実を読み上げるように。
 「あなたが扱った事件の中には、私だったらもっと手早く、いろいろな意味でもっとうまく解決できただろうものも、たしかにあります。
 ですが、私が思いつきもしなかったやり方、予想はできてもそれ以上のやり方で解決したものも、いくつもありました。
 ………まったくもって、お見事でした。」
 目の奥が熱い。
 こちらをふりかえったはずの、青年の姿がぼやけている。
 いよいよ死にかけているからだ。そのために視力が落ちているのだ。
 断じて他の理由からではない。断じて。
 そんなニアの心中を知ってか知らずか、とぼけた口調はさらに続いた。
 「それにあなたは、私がやらなかった───やろうともしなかったことをやりとげました。
 後継者の育成です。」
 「………。」
 「あなたがここですごしている間に関わった子供たちの多くが、新たな『L』となりました。
 犯罪捜査とは関係のない進路に進んだ子も、その世界の『L』……最高の頭脳と呼ばれるほどになりました。」
 「……それはその子たち自身の功績です。私は何もしていません。」
 それはずっと以前から言われていたことだった。
 最初に訪れた女の子……先ほど、ずっと年下の後輩の女の子の手をひいてここへ来ていたあの子がロジャーの次のワタリとなり、Lの仕事もこなすようになり、彼女の次の訪問者が医学界で名を馳せるようになったころから、ずっと。
 あの部屋へ行く子は、自分から何かに惹かれて行くのではなく、『L』であるニアが後継者候補を選んで呼びよせているのだと。
 誓ってそんなことは無いのに。
 自分もあの子たちも、同じ空間で同じ時間をすごし、何度か言葉を交わしただけだ。
 何とはなしに、それを心地よく感じて。
 「たまたま結果的にそうなっただけのことです。
 私のところによく来ていても属する世界で取り立てて注目されていない子もいますし、逆に全く来ていなくてもその世界のホープとして活躍し、期待されている子もいます。
 割合からすればたしかに多いですが、もともとハウスにはそういう素質の子供たちが集められていたのですし、何より私は何もしていません。あの子たちに話しかけられたときだけ、多少返答していただけです。
 私が『次のL』『新たなL』に育てたわけではなく、彼ら自身が勝手に───あるいは自ら望んでそう育ってくれたのです。」
 「では、私と同じですね。」
 青年が初めてにやりと笑った。
 「いや、私など会話すらしなかったのに、あなたはちゃんと二代目Lに勝手に育ってくれました。」
 言われてふと思う。
 モニター越しにLの言葉を聞いて、自分はますます『L』が好きになり───そしてますます次の『L』になりたいと強く望むようになったのだった。
 ……もしかしてあの子たちもそうだったのだろうか?
 こんな自分に近づきたいと願い、そのために、持って生まれた天性の能力をさらに磨こうとしたのだろうか。
 わずかに交わした言葉すら、「知っていますか? 死神というのは、顔が髑髏で鎌を持っているものばかりじゃないんですよ」だの、「チョコレートは、カカオ含有率90%以上のものでないと食べる気がしません」だのといった、他愛のないものばかりだったのに。
 「さて……。」
 新たな感慨に沈み込みそうになるニアの意識を、Lの声が引き戻す。
 「つもる話はまた後で。
 本当は彼が来るはずだったんですがねえ。あなたが私への疑問をやけに気にしているもので、ふてくされてちょっと先で待っているんですよ。」
 「………?」
 いぶかしく見上げた視線の先、Lの肩越しの遠方に、小さく細い姿が見えた。
 ───金色の髪に、細身の黒い影。
 ニアは思わずベッドから飛び降り、駆け出した。
 あれほど力の入らなかった手足が、きしんだ体中の関節が、かろやかに動く違和感にさえ気づかない。
 すでに周囲が自分の部屋ではないことにすら。
 残されたL1度だけ、ぼんやりと輪郭の残る部屋の中を見回し。
 そうして、ニアの後を追うように、白い世界へゆっくりと歩み出していった。
 
 
 
 ワイミーズハウスの奥まった一室。
 わずかなカーテンの隙間から見える窓越しの空には、白いものがちらつき始めていた。
 その様子に気づくふうもなく、ベッドに横たわっていた老人の瞳がゆっくりと閉じていく。
 それにあわせ、風など入るはずもないのにカーテンがゆらりと揺らめき───
 わずかにあった隙間を、ぴたりと閉じた。
 
 
 
 
 
(了)
 
 
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